こんにちは、ウェルテック編集部です。
今回は、プロバイダ制限責任法について、なるべくわかりやすく解説したいと思います。
字面からして少々難しそうな印象もありますが、
開発、デザイン、ITサービス事業者など、IT関連のビジネスをしている方や、
SNSをはじめ、ネットをよく活用する方にとっては、法律に関わることなので、知っておくべき内容となります。
先日、2021年2月26日、共同通信がこのようなニュースを報じました。
政府は26日、インターネット上で匿名の誹謗中傷を受けた被害者が投稿者を特定しやすくするための関連法改正案を閣議決定した。新たな裁判手続きの創設が柱。開示にかかる時間や費用の負担を軽減し、より迅速な被害者救済につなげる。
この、関連法というのが、プロバイダ制限責任法です。
簡単にいうと、
webサイトやSNS・ネット掲示板などで権利侵害があった場合、
「プロバイダ、サーバの管理者に対し、損害賠償責任の制限をし、発信者情報の開示請求ができる」
という法律です。
それでは、詳しく見ていきます。
ネットの書き込みで誹謗中傷を受けたら
例えば、ネットで誹謗中傷を受けたときにどのような流れになるでしょう。
・インターネット上で名誉毀損や誹謗中傷を受ける
↓
・誹謗中傷のコメントした発信者に対し損害賠償請求ができる
端的にいうとこのように被害者は加害者に損害賠償請求ができる、ということになります。
誹謗中傷がどのような内容かにもよりますが、
内容によっては、発信者は名誉毀損などの刑事罰が下されることもあります。
しかし、重要なのは、ネット上での発信は匿名で行われることが多く、発信者を特定することが困難な場合もある、という点です。
そうすると、誹謗中傷を受けた被害者は、発信者に対して損害賠償請求をすることができません。
そんなときに、発信者を特定する方法として、「プロバイダ責任制限法」が加害者である発信者を特定する手段を規程しています。
プロバイダ責任制限法の概要
プロバイダ責任制限法の役割で重要なのは2点あります。
損害賠償責任の制限(三条)
webサイトやSNSなど情報の流通によって他人の権利が侵害された場合、
それによって生じた損害について、一定の条件のもとプロバイダ・サーバ管理者等は賠償の責任を負わないと定めています。
プロバイダの責任"制限"の部分ですね、例えば、あるSNSで誹謗中傷のトラブルが起きても、条件付きですがSNS運営者は責任を負わない、ということになります。
発信者情報の開示請求等(四条)
webサイトやSNSなど情報の流通によって他人の権利の侵害を受けた者は、
その権利侵害を行った発信者の情報の開示を一定の条件のもとプロバイダ等に請求することができると定めています。
例えば、誹謗中傷のコメントがどの投稿者IPアドレスから発信されたものか、普段サービス事業者は持ってはいるが公開していない情報、
これに対して、開示を求めることができる、というわけです。
なお、発信者情報の開示請求をプロバイダやサイト管理者にする場合は、
・明白に権利侵害である
という点を具体的に主張することが必要となります。
申し立てから、開示までは一般的に8〜9ヶ月程度かかるとも言われ、
またプロバイダが投稿者IPアドレスの情報を保管している期間は数ヶ月程度とも言われますので、
不当な投稿を見つけたら早めに対応すべきです。
今回の法改正
プロバイダ責任制限法は、今まで違法・有害情報の流通に対して、紛争が起きた場合、
当事者間で解決するしかありませんでしたが、
この法律ができたことで、
一定の要件のもとプロバイダが情報流通の防止措置を行ったり、発信者情報の開示請求に応じることが可能になりました。
そして、冒頭に述べた、今回の改正では、発信者を特定するプロセスをさらに簡略化することが可能となります。
これまでは、誹謗中傷に当たる内容を書き込んだ投稿者のIPアドレスや個人情報を取得するために、
サイト運営者やプロバイダに対し仮処分申請や訴訟など2〜3回の裁判を起こす必要があり、
尚且つ半年以上の期間がかかっていました。
改正後は、被害者の申し立てを基に裁判所が情報開示を判断することできるようになり、
時間的、費用的な面で被害者の負担軽減されることになりました。
今国会で成立した場合、2022年内には施行されるようです。
おわりに
普段無料で使えるwebサービスやSNSですが、その使い方一つでときには凶器にもなることを改めて認識しなければなりません。
特に、他人を傷つけるような発信は、匿名性の強いwebといえども当然NGです。
去年、インスタグラムが、攻撃的な投稿に対してAIで感知し、
「本当に投稿しますか?」というアラートを出す仕組みを導入しました。
若い世代を中心に、SNSを起因としたいじめの問題も深刻化していますので、
SNSのガイドラインも日々厳格化されてきています。
多くの有益な情報に触れることができるwebですが、
誹謗中傷・フェイクニュース・デマなど有害情報が流れていることも事実です。
情報発信者は情報発信者の都合で行動していますので、
偏った発信に惑わされることなく、多角的な視点で情報を捉えることが重要です。
そして、その有害情報により、心身ともに疲弊する人が続出したり、ときには命を落とす人がいることを忘れてはなりません。
一人ひとりがリテラシーを高めることで、ITサービスや社会のありようも変化していきます。
できるだけ誹謗中傷やネガティブ、攻撃的な発信はしないように心がけていきたいですね。
ネットでの誹謗中傷についての記事はこちら
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参考:
総務省・インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)