こんにちは、ウェルテック編集部です。
2020年12月21日、政府が地方創生戦略を改訂した、との発表がありました。
今回はその内容について要約をしたいと思います。
この改訂は、以前からの地方創生戦略であった
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を、
新型コロナウイルスの社会的な影響拡大をふまえたものに改訂し、当面の方向性を示したものです。
感染症による様々な影響
新型コロナウイルスの拡大で、従来から進めていた地方戦略は感染症の対策を盛り込んだものに改訂することになりました。
地方戦略の視点で新型コロナウイルスの影響を受けた2点というのが、
・地域経済、生活への影響
→マクロ経済、地域経済の産業、雇用情勢、地域における社会的影響(感染拡大への過度な対応、感染者への差別、交流人口の減少)
・国民の意識、行動変容
→テレワークの普及、地方への関心、人の流れ、企業の意識行動変容
ということになります。
そこで、「感染症が拡大しない地域づくり」に取り組むこと。
これを付け加えることが今回の戦略改訂における重要なポイントなのです。
デジタル化を中心とした新たな取り組み7つ
感染症が拡大しない地域づくりを前提として、
下記の施策に注力します。
- デジタルトランスフォーメーション(DX)
- 脱炭素社会(グリーン社会)
- 地方創生テレワーク
- 魅力ある地方大学の創出
- オンライン関係人口
- 企業版ふるさと納税(人材派遣型)
- スーパーシティ構想
・・国は、地域社会がこれらを地方創生の取り組みとして導入できるよう、全省庁と連携し総合的に進めます。
ただ、そのためには地域の魅力を発信すること、各自治体が主体的に取り組むことが求められ、国はその支援をする。
ということになります。
基本目標と施策の方向性
この戦略の大きな目標は、「将来にわたって活力のある地域社会」を実現することです。
そのためには、地域社会において、
- 結婚、出産、子育ての希望を叶えやすくする
- 魅力を育み人が集う、地方移住の希望を実現しやすくする
- 地域外からの稼ぐ力を高め、地域経済の循環化を促す
といった取り組みが重要となります。
これら施策で活力を高め、地域に人が流れるようにする、
もしくは流れることによって、人口減少を和らげ適応した地域をつくりたい、ということになります。
それでは、感染症の対策をふまえた上での「ひと・しごと」の流れを作ることで、
具体的にどのような目標があるのでしょうか。それは、4つ示されています。
- 稼ぐ地域をつくるとともに、安心して働けるようにする(専門人材や担い手の確保)
- 地方との繋がりを築き、地方への新しい人の流れをつくる(地方移住推進)
- 結婚、出産、子育ての希望をかなえる
- ひとが集う、安心して暮らすことができる魅力的な地域をつくる
これらは、わかりやすく東京圏一極集中の是正、と言えますね。
国はあくまでも、地域のみでは対応しきれない面をサポートする、という役割です。
つまり、これから各地域社会は、感染症をふまえて人の流れをつくり
地域の特色を活かした自主的・主体的な取り組みを示さなければなりません。
注力する施策を具体的に
DXの推進と脱炭素社会の実現に向けた取り組み
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、「ITの浸透で、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念のことです。
ありとあらゆるものがデジタル化し、データとなる時代。
このことから、Society5.0という考え方が提唱されました。
これは、「超スマート社会」とも言われ、 IoTによりサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を連携し、すべての物や情報、人を一つにつなぐとともに、AI等の活用により量と質の全体最適をはかる社会のことです。
Society5.0を地域社会にもより浸透させることで、医療、福祉、教育など社会全体の未来技術の実装を支援し、
デジタルトランスフォーメーション(DX)を強力に推進していくという取り組みです。
具体的には、ヘルスケア、ドローン配送、自動運転、遠隔操作ロボット、ロボットトラクタ、地域データ活用、地方創生テレワーク、スーパーシティなどを用いた、新しい社会システムの構築です。
これを実現するためには、「5G基盤」「人材確保」「キャッシュレス基盤」、これらの整備が重要なポイントとなります。
さらに、環境と成長の好循環及び脱炭素社会の実現に向けた取り組みを強力に推進します。
SDGsを普及促進させ、持続可能なまちづくりを目指します。
地方創生テレワーク
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、地方で暮らしてもテレワークで都会と同じ仕事ができるとの認識が拡大しています。
特に、デスクワークや、システムエンジニア、webデザイナーなど、パソコン一つで仕事ができる人は、月に1回東京に行けば今までと変わりない、という方も多いのではないでしょうか。
これは地域社会にとって、大きな機会であると言えます。
地方におけるサテライトオフィスでの勤務など地方創生に資するテレワーク (地方創生テレワーク)を推進することで、
地方への新しい人の流れを創出し、 東京圏への一極集中是正、地方分散型の活力ある地域社会の実現を図ります。
魅力ある地方大学の創出
地方公共団体が先導し、大学、産業界等の連携により地域に特色のある研究開発や専門人材育成等を行う優れた 取り組みについて、引き続き地方大学・地域産業創生交付金等により重点的に支援を行い、
産業振興・若者雇用の促進 に向けた「キラリと光る地方大学」づくりを進めます。
地方公共団体と大学とのマッチングを進めるとともに、大学等による創意工夫に基づく取組を促進するための環境整備により、
テレワークと同様に、地方へのサテライトキャンパスの設置などの環境整備を推進します。
オンライン関係人口
地方移住の裾野拡大や地域課題の解決のため、 「関係人口」を創出・拡大を進めます。
関係人口とは、移住した人たちを指す「定住人口」でもなく、観光で訪れた人を指す「交流人口」でもない人で、
地域や地域の人々と多様に関わる人のことをいいます。
例えば、住んではないがその地域に親戚などのルーツがある人、あるいはふるさと納税で寄付をしたことから、その地域に関心を持っている人、などのことです。
これらの人たちの活動を後押しすることで、人の流れをつくる、というわけです。そして、その流れは必ずしもオフラインだけでなく、オンラインでも可能と言えます。
都市と地域の両方の良さを活かして働く・楽しむ動きを捉え、オンライン関係人口など必ずしも現地を訪れない形での取り組み等も支援します。
企業版ふるさと納税(人材派遣型)
企業版ふるさと納税の仕組みを活用して、専門的知識・ノウハウを有する企業の人材の地方公共団体等への派遣を促進することを通じて、地方創生のより一層の充実・強化を図ります。
具体的には、企業で活躍する人材の人件費を企業が持つかたちで、地方公共団体のプロジェクトに参画させることで、関係人口の創出や、人材の育成を図る、というものです。
スーパーシティ構想
スーパーシティ構想とは、 住民が参画し、住民目線で、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指す、国家戦略特区のことです。
ポイントは3点あります。
①生活全般にまたがる複数分野の先端的サービスの提供
→AIやビッグデータなど先端技術を活用し、行政手続、移動、医療、教育など幅広い分野で利便性を向上させる。
②複数分野間でのデータ連携
→複数分野の先端的サービス実現のため、「データ連携基盤」を通じて、様々なデータを連携・共有。
③大胆な規制改革
→先端的サービスを実現するための規制改革を同時・一体的・包括的に推進。
中でも重要なのは、オープンAPIを介した「データ連携」です。
最新サービスと最新技術を用いることにより、あらゆる活動をデータ化し連携させることが可能となります。
つまり、住民の動きが可視化されることで、困ったことを解決しやすく、利便性を向上しやすくする、ということになります。
令和3年の春頃にスーパーシティの区域が決定されます。
おわりに
東京の一極集中は経済の発展に大きく寄与しましたが、
人が密集していることから感染症の拡大を防ぎづらいという側面があります。
地方戦略に感染症対策が盛り込まれたことで、
一極集中の社会から地方へ分散する流れが顕著になったとも言えるのではないでしょうか。
政府はこの流れをさらに加速させたい、という意向のようです。
この戦略改訂から読み取れる点として、
では、これら施策のメインターゲットとなるのは誰か?ということが挙げられます。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」というからには、地域社会(まち)において「ひと」が集まり「しごと」をつくることで活性化させることを目論んでいると言えます。
そして、DXやテレワークなどから、デジタルを使いこなせて、結婚・出産・子育ての希望が叶えられる年代、
ということが明らかです。
つまり、地方自治体は今後20代から30代を中心とした移住の促進を主体的にしなければならない、ということになります。
翻って、主体的に取り組むことができない自治体があれば、そこは新たな人材が活躍できるチャンスがある、ということも言えるのではないでしょうか。
まだ、不明確な点や疑問点もありますが、感染症対策、そしてデジタル化がカギとなることは間違いなさそうです。
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