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RESASとは?無料で使える地域経済分析システムと活用事例

こんにちは、ウェルテック編集部です。

今回は、地域活性化の取り組みや地域経済の分析に欠かせないツールである、

「RESAS(リーサス)」の概要と、その活用事例についてご紹介したいと思います。

 

今回の内容は、特に、自治体の方、新規事業を検討している方、地域活性化に興味のある方にオススメです。

 

RESASとは

地域経済分析システム(RESAS:リーサス)は、地方創生の様々な取り組みを情報面から支援するために、経済産業省と内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供しています。
自治体職員の方や、地域の活性化に関心を持つ様々な分野の方によって、効果的な施策の立案・実行・検証のためなどに広く利用されています。(RESASホームページより)

地域経済分析システム、と言っても馴染みがある人は少ないかもしれません。

平たく言うと、官民が持っている人の流れや産業の構造のデータを可視化したシステムと言えます。

 

つまり、このシステムを使うと、

・人の流れが見える(From-To分析、目的地分析)

例えば、ある日に××県◆◆市から△△県■■市へ移動した人がどれくらいいるか、

その市のどのスポットに訪れている人が多いのか、などがわかります。

平日、休日の移動の比較や、海外からの観光客の流入などもわかります。

 

・今どうなっているかがわかる(人口マップ、産業構造)

人口はどれくらいか、その地域の産業はどのような構成か。過去との比較、他の自治体との比較をすることができます。

地域の特色が一目瞭然になります。

 

・これからがどうなるか読める(人口推移、将来人口推計)

人口の増減は自治体サービスに直結する重要な要素です。

〇〇市の人口がどのように推移しているかがわかるので、将来を推察できます。

どのような人口構成で将来どうなるかの数字を見ることができます。

 

 

上記の画像はRESASの機能のほんの一部ですが、このように地域の様々なデータを視覚的に把握することができ、

データに基づいて地域を理解することで、今後の予測や対策が立てやすくなる、というわけです。

 

RESASの活用事例

それでは、RESASの機能を使って実際どのようなことができるのか、

活用事例をピックアップしてみます。

 

北海道ニセコ町

ニセコ町は、札幌市や新千歳空港から車で約120 分の道央西部にあり、 東は羊蹄山、北はニセコアンヌプリに囲まれた自然であふれた地域です。

国際スキー場を有し、スキーヤーやスノーボーダーを中心に「パウダースノー」と呼ばれる世界でも最上級の雪質て有名。

それを満喫できるよう、利用者の自由と安全のために地域全体で定めた「ニセコルール」が注目を集めています。

自然環境と調和した持続可能なまちづくりにも積極的で、2014年には環境モデルとしとしても選定された国際観光リゾートです。

 

RESAS活用の背景

ニセコ町は、国際スキー場を中心とした国内有数の国際観光リゾートで、海外からも多くの観光客が訪れています。

さらに近年、ホテルやコンドミニアムの建設が増加しており、国際的なホテルチェーンも進出するなど、

観光投資が活発となっています。しかし、こうした観光分野の動向が町の活性化にどのような影響を及ぼしているのかを把握できていませんでした。

そこで、町が本当に観光で稼げているのかを検証するため、RESASで現状分析を行いました。

 

まずは地域経済循環マップで現状の課題の見える化

 

(地位経済循環マップ・地域経済循環図の例)

分析1 地域の経済循環(地域経済循環マップ)

地域の経済循環を分析し、現状把握。 2010 年の支出に着目したところ、 地域外から活発な観光投資が43億円ある一方、民間消費額は31 億円、地域内産業の移輸出入収支額等により構成されるその他支出は81億円と、流入額を大きく上回る地域外流出があり流出超過となっていることがわかる。

▶︎観光による好影響も、民間消費額及びその他支出が地域外へ流出している

 

分析2 町内産業の移輸出入収支(地域経済循環マップ)

ニセコ町では「観光で稼ぐ」ことを「地元の産業、住民、自治体の収入が向上すること」と定義し、町内産業の移輸出入収支、町民所得、町の財政の面から分析することとした。その結果、観光客や観光投資の増加による産業への影響は、特定の産業だけに限定されるものではなく町内産業に広く及ぶものと考えられるが、大半の産業の移輸出入収支がマイナスとなっているため、観光が域外からの稼ぎにつながっていない可能性があることがわかった。

▶︎移輸出入収支は町内産業の大半がマイナスで、農林水産業のみプラスである

 

分析3 町民所得(独自分析)

町民所得の分析をニセコ町独自で作成。ニセコ町の町民所得は近隣自治体と比較してもやや右肩下がりということがわかる。

▶︎観光が町の稼ぎになっていない

 

分析4 町の財政(地方財政マップ)

札幌市、ニセコ観光圏に属する隣接自治体等と比較したニセコ町の財政力指数は、

札幌市や倶知安町、全国平均より低い値となっている。また、近年観光投資が活発になっているにもかかわらず、推移はほぼ横ばい。

▶︎町の財政の面からも、観光が町の稼ぎにつながっていない可能性が高い

 

課題の見える化で多くの気づき。今後の目標を設定

(観光マップ・外国人訪問分析の例)

町内産業の移輸出入収支、町民所得、町の財政の面から検証した結果、観光が町の稼ぎに十分つながっていない可能性が高いことが分かりました。

そんな中、農林水産業が唯一、移輸出入収支がプラスである点に着目し、地元の農産物を活用した「食」の魅力により町内の観光消費を増やすことを今後の目標として設定。観光マップを中心に、町内の動向やターゲットの明確化、アプローチ方法などをを図ります。

 

分析5 町の農産物の特徴(産業構造マップ、独自分析)

ニセコ町産の農産物を活用した「食」の魅力創出によって域外から稼ぐための検討にあたり、 ニセコ町の農業の特徴について、産業構造マップに加え、独自にも分析。

ニセコ町および隣接自治体の農業部門別販売金額をみると、ニセコ町は販売金額の大半を占めるような主要作物はないが、それにもかかわらず、 倶知安町とほぼ同水準であり蘭越町を上回っていることがわかる。

ニセコ町および隣接自治体の農産物の出荷先別販売金額の構成をみると、倶知安町や蘭越町は「農協」が大半を占めるのに対し、

ニセコ町は「卸売市場」 や「消費者に直接販売」の割合が比較的大きいことがわかる。

これは、2014 年に「重点道の駅」に選定され全国的に注目されている「道の駅ニセコビュープラザ」での販売による部分が大きいと推察。

「道の駅ニセコビュープラザ」の直売所の年間売上げや農産物の品揃えをみると、売上げは年間 3 億円に迫り、今後も増加が見込まれていることや、 年間を通して多種多様な農産物を販売していることがわかる。

▶︎以上を総合的に勘案すると、多種多様な農産物を販売する道の駅の売上げが好調。道の駅の人気の理由は農産物の豊富な品揃えにあるのではないか

 

分析6 道の駅の検索数(観光マップ)

ニセコ町産の多種多様な農産物が集まる道の駅が「食」の魅力発信拠点となり得るかを検証するため、道の駅の検索数を分析。

町内の主要スポットの目的地検索回数をみると、

「道の駅ニセコビュープラザ」は町内で 2 番目に多く検索されており、

「道の駅ニセコビュープラザ」を検索した人の出発地をみると、札幌市やニセコ町の近隣自治体を中心に、町外からも多くの観光客 が訪れていることが推察される。

▶︎道の駅は町外からの関心が高く、多くの観光客が訪れている町の主要な観光スポットであり、町の「食」の魅力発信拠点となり得る

 

分析7 道内の冬季における観光スポットの集客状況(観光マップ)

道の駅の「食」の魅力発信拠点としての可能性を深掘りするため、道の駅の集客傾向を分析。

「道の駅ニセコビュープラザ」および近隣自治体の道の駅の目的地検索回数月別推移をみると、

すべての道の駅で冬季の集客に苦戦している傾向がみられる。

また、札幌市近郊を除く道内の主要スポットのうち、2016 年 1 月(休日、自動車) における目的地検索回数 50 回以上のスポットを示したものをみると、道内において冬季の集客が好調なスポットは、スキー場や温泉が多いことが分かる。

▶︎道内の冬季の観光はスキー場や温泉が中心で、道の駅の集客は落ち込む傾向。道の駅の活用にあたってはこの特徴を踏まえた検討が必要

 

分析8 外国人宿泊者数(独自分析)

次に、ニセコ町の「食」の魅力を届けるターゲットについて独自に分析。

2015 年度におけるニセコ町および倶知安町の国別訪日外国人宿泊者数(延べ人数) を示したものをみると、

「中国」「韓国」「台湾」等でニセコ町の方が多くなっているが、全体的に倶知安町の方が多く、

中でも「香港」「シンガポール」「オーストラリア」が 大きく牽引していることが分かる。

▶︎倶知安町に宿泊する外国人観光客を、ニセコ町の「食」の魅力発信のターゲットとして設定し、さらに分析を進めることとする

 

分析9 観光客の周遊状況(観光マップ、まちづくりマップ)

ターゲットとして設定した倶知安町に宿泊する外国人観光客にどのようにしてニセコ町の 「食」を届けるかを検討するため、外国人観光客の周遊状況を分析。

ニセコ町および倶知安町における外国人の滞在状況をみると、外国人は倶知安駅やスキー場の周辺に集中しており、

ニセコ町中心部の滞在は少ないことがわかる。ニセコ町および周辺エリアにおける日本人(流動人口)の滞在状況を示したものは、

広範囲で周遊状況がみられるため、日本人に比べて外国人は 一部のエリアに滞在が集中している傾向にある。

以上の分析結果の背景には、スキー場周辺とニセコ町中心部をつなぐ公共交通が脆弱で、自ら自動車を運転しない外国人富裕層等が一部のエリアにとどまらざるを得なくなっていることが考えられる。

▶︎外国人観光客は近隣への回遊性に乏しく、「食」を届けるにはこのような背景を踏まえた検討が必要

 

分析10 飲食店の立地動向(まちづくりマップ)

ニセコ町全体として「食」の魅力を向上していくためには、道の駅だけでなく、町内の飲食店の役割も重要であると考え、

町内および周辺エリアの飲食店の立地動向について分析。

ニセコ町およびその周辺の飲食店の立地動向を示したものをみると、 倶知安駅周辺に多数の飲食店が集中しているのに対し、

ニセコ町側の飲食店は広域に点在、件数も少ないことがわかる。

▶︎町の「食」の魅力向上には、飲食店の数を増やすとともに、点在する飲食店と観光客をつなぐための対策が必要

 

分析11 働き手の確保状況(独自分析)

ニセコ町内での観光消費の増加を「食」の魅力により実現するためには、その担い手となる人材の確保が必要不可欠である。

そこで、働き手の現状について分析。ハローワーク岩内の有効求人倍率を道内の他地域と比較したものをみると、

道内で突出して高く、全国・北海道の平均も上回っている。

また、ハロー ワーク岩内の有効求人数、有効求職者数および有効求人倍率を職業別に示したものをみると、有効求人数および有効求人倍率は、飲食や接客等の観光に深くかかわる「サービスの職業」が突出して高くなっている。

▶︎ニセコエリアの近年の観光の発展で現状でも人手不足が深刻であることが推察される。今後施策を実現するには、働き手の確保が最重要課題

 

これら分析から、ニセコ町では以下の3つの方針のもと施策検討を進めています。

  1. 道の駅から冬季の「食」(料理)を観光客へ届ける。
  2. 飲食店を増やし、食材と観光客を飲食店に集める。
  3. 公共交通を最適化して、観光客が町内を周遊しやすくする。

一方、これらの施策を実現するためには、働き手の確保が最重要課題です。

地域住民と行政との連携に加え、地域おこし協力隊等の外部人材も積極的に活用し、人手不足に対応しています。

 

「課題意識を持ってデータを読み取る」「独自分析と組み合わせる」

いかがでしょうか。

地方創生が重要政策になっている現在、自治体や地域に関わる方にとっては、

これらデータをすべて無料で使うことができるというのはかなり魅力的だと思います。

ニセコ町の事例で重要なのは、「課題意識を持ってデータを読み取っている点」「独自分析と組み合わせている点」

ではないでしょうか。このことで、データがより意味を持ち、分析結果の推察の角度が確かなものになります。

分析を確かなものにした上で施策に直結させ、PDCAを回すことで地域が変わっていくのではないでしょうか。

長くなってしまいましたので、今回は一旦以上にします。

次回もRESASの活用事例について、ご紹介をしていきたいと思います。

 

参考:

地域経済分析システムRESAS

北海道ニセコ町「食」の魅力を中心とした町内観光消費の促進 (pdf 24.4MB)

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